筋緊張でわかる ポジショニングの良し悪し
- 中村 研司
- 22 時間前
- 読了時間: 5分
〜リラックスできる姿勢が、ケアの質を高める〜

はじめに
ポジショニングは、褥瘡予防や拘縮予防、呼吸・嚥下機能の維持など、患者さんのQOL(生活の質)に直結する重要なケアです。しかし、「良いポジショニング」とは何かを明確に説明できる人は意外と少ないかもしれません。
実は、筋緊張の状態を観察することで、ポジショニングの良し悪しを客観的に評価することができます。本記事では、看護師の皆さんが日々のケアに活かせるよう、筋緊張とポジショニングの関係をわかりやすく解説します。
良いポジショニングの2つの柱
1. 圧分散による快適性の確保
良いポジショニングでは、広い接触面積で身体を支えることが基本です。これにより、局所的な圧迫が軽減され、不快な圧力刺激が減少します。不快感がなければ、患者さんは自然と身体の力を抜くことができ、筋緊張が緩和されます。
一方で、圧が集中していると、身体はその圧から逃れようとする代償運動を起こします。この代償運動は主に筋肉を使って行われるため、静的筋活動が誘発され筋緊張が高まります。
✅ ポイント:
ポジショニング後に患者さんの表情や呼吸、四肢の緊張を観察し、リラックスしているかを確認しましょう。
2. アライメントを整える
もう一つの重要な要素がアライメント(身体の整列)です。身体がねじれていたり、骨格の自然なラインから逸脱していると、内臓や靭帯が引っ張られたり圧迫されたりして不快感が生じます。
この不快感もまた、代償運動を引き起こし、筋緊張を高める原因になります。特に高齢者や神経疾患を持つ患者さんでは、わずかなアライメントの乱れが大きな影響を及ぼすことがあります。
✅ 観察のヒント:
骨盤の傾き、肩の高さ、頭部の位置などを左右対称に保てているかをチェックしましょう。
静的筋活動(スタティック・マッスルアクティビティ)とは?
ポジショニングにおいて注目すべき筋活動は、静的筋活動です。これは、筋肉が伸び縮みせずに姿勢を維持するために働いている状態で、筋収縮を伴わない持続的な緊張が特徴です。
静的筋活動が続くとどうなる?
- 毛細血管が圧迫され、血流が低下
- 筋肉が硬くなり、拘縮や疼痛の原因に
- 関節の可動域が制限され、変形のリスクが上昇
このような状態を防ぐためには、筋肉が活動しなくても快適な姿勢を保つことができるように支えられており、不快な圧迫もきちんと除かれている状態が必要です。つまり、無意識化での安定感と適切な圧分散=筋緊張の緩和につながるのです。
筋緊張を評価する視点
ポジショニングの効果を評価する際には、以下のような視点で筋緊張を観察しましょう:
- 表情が穏やかであるか- 呼吸が深く、安定しているか
- 四肢や体幹に過度な緊張がないか
- 手足が自然に開いているか(握りこみがないか)
これらのサインが見られれば、圧分散とアライメントが適切に保たれていると判断できます。
看護師としてできること
- ポジショニング後は必ず筋緊張のチェックを行う
- 必要に応じて再調整を行い、患者さんの反応を観察する
- 他職種(PT・OT・ST)と連携し、個別性の高いポジショニングを検討する
- ポジショニングの効果を記録・共有し、チームでのケアの質を高める
適切なポジショニングクッションを利用する
ポジショニングクッションが不足していて布団やタオルを用いて代用している現場もまだあると思います。できることをまずやる。素晴らしいことだと思いますが、優れた圧分散と姿勢保持性能備え、感染症対策もしっかりと行えるポジショニング専用クッションのご利用がオススメです。
人手不足の現場において、用具でカバーできるところは用具でカバーする取組は看護の質の向上はもちろんのこと、職場のサステナビリティ向上にもつながっていきます。
参考動画:
高齢者施設でのベッド上ポジショニングの取組みに密着取材
宮崎県にある特別養護老人ホーム白寿園でのポジショニングの取組をご紹介している動画です。筋緊張に着目して施設一丸でポジショニングに取り組んでいる姿がとても印象的です。
まとめ
ポジショニングは、単に「姿勢を整える」だけでなく、筋緊張を通じて身体の快適性と健康を守るケアです。筋緊張の緩和は、圧分散とアライメントが適切であることのサインであり、患者さんの安心感やQOLの向上にもつながります。日々のケアの中で、ぜひ「筋緊張」という視点を取り入れてみてください。
ポジショニングを学ぶ:
LACスクールの人気講師でドイツ人看護師のサビーネ・ベッカー先生のポジショニング講義を収録したDVD教材を現在無料でプレゼントしています。ストリーミングですぐにご視聴することも、DVD版を取り寄せて職場の皆様で学ぶこともできます。是非この機会にポジショニングのスキルアップとしてご活用ください。
今日も一日お疲れ様です☆彡
最後まで読んでくださり誠にありがとうございました。医療と介護の現場で奮闘されている皆様に心より感謝しております。皆様にとって少しでもお役に立つ情報がお届けできるように頑張りますので、応援よろしくお願いします♪
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