看護師のためのポジショニングの基本と実践ポイント
- 中村 研司
- 5 時間前
- 読了時間: 6分
看護師として日々のケアに欠かせない「ポジショニング」。単なる体位変換ではなく、患者さんの全身状態を考慮した科学的な姿勢管理であり、褥瘡予防・呼吸循環の改善・安楽の確保など、さまざまな目的を持つ重要な看護技術です。
地球上では24時間365日重力が発生します。この力を患者さんの治療やケアにとってプラスに作用させることを考えて姿勢体位管理を行うことで、より良い影響を与えることができます。
反対に、リラックスできない体位を長時間取らせてしまうことは筋緊張を高めて関節拘縮のリスクを高めてしまいます。つまり、ADLやQOLの低下につながってしまいます。
今回は、これまでの知見をベースに、看護師が臨床で実践できるポジショニングの基本と応用ポイントをわかりやすく解説します。

看護におけるポジショニングの目的とは?
ポジショニングの主な目的は以下の通りです。褥瘡予防はもちろんですが、それ以外にも患者さんにとって様々な影響を与える点にも注意が必要です。
- 褥瘡の予防:圧迫部位の血流を保ち、皮膚障害を防ぐ
- 呼吸・循環の改善:肺の拡張や静脈還流を促進
- 関節拘縮の予防:自然な関節可動域を維持
- 患者の安楽の確保:痛みや不快感の軽減、安心感の提供
- 自立支援の一環:適切な体位は、ADL(日常生活動作)向上にもつながります
看護師が押さえておきたいポジショニングの基本原則
1. アセスメントがすべての出発点
- 既往歴、皮膚状態、筋緊張、意識レベルなどを事前に評価
- 呼吸状態や循環動態も観察し、最適な体位を選択
- 「その人らしさ」を尊重したケア:ポジショニングは単なる技術ではなく、患者の尊厳を守る行為でもあります。患者さんの身体的、精神的、心理的ニーズを考えることが重要です。
2. 広い「面」で支える
- 骨突出部(仙骨・踵・肩甲骨など)への圧迫を避ける
- 広い面積で支えることで局所への圧を分散させる。

ココが最重要!
広い面積で支えることは局所への圧分散効果が期待できるだけでなく、全身の筋緊張緩和につながります。不快な圧が加わるとその圧から逃れようとして筋活動を誘発します。不快な圧がかかり続ける環境では患者さんの静的筋活動も持続します。その状態は血流の阻害要因になりますし、筋肉にとっても関節にとっても大きな負荷がかかり重度化への懸念につながります。
3. 適切な用具を使用する
- ポジショニング専用のピローやクッションを利用する
- ふとんを丸めたりタオルで代用することもできるが、あくまで不足時の一時対応に留める
Tip
ポジショニングクッションに求められるポイント
- 姿勢保持性能があること
- 丸洗いできるなど衛生管理や感染症対策ができること
- 寝具としての快適性があること
4. 体位変換は「頭から足へ」
- 頭部→肩→骨盤→下肢の順に動かすことで、患者の不安を軽減
- 螺旋の動きを利用するとより自然に、より負担を少なく動かすことができる
- 声かけを忘れず、患者のペースに合わせた動作を心がける
Tip
自分のからだにきいてみる
自分が動くならこういう順番で、こんな風に、ここに重心を移して動く。自分のからだを教材にして動きを考えると、より自然で負担の少ない動きで患者さんを支援できます。
5.「ずれを」を防止
- 体位変換後は必ず背抜きを行うなど、摩擦やずれによる皮膚損傷を予防
- スライディングシートやスライディンググローブの活用も有効
プレゼントのお知らせ:
LACスクールの人気講師でドイツ人看護師のサビーネ・ベッカー先生のポジショニング講義を収録したDVD教材を現在無料でプレゼントしています。ストリーミングですぐにご視聴することも、DVD版を取り寄せて職場の皆様で学ぶこともできます。是非この機会にポジショニングのスキルアップとしてご活用ください。
よく使われる体位とそのポイント
ポジショニングでよく使われる体位は、仰臥位、側臥位、座位、伏臥位の4つです。これらの体位は、呼吸を楽にする、褥瘡の予防、関節の拘縮防止、筋緊張の緩和など、様々な目的で応用されます。
1. 仰臥位:
メリット:身体全体をベッドに載せ、圧を分散させやすい
ポイント:頭部を少し挙上させることで呼吸を楽にする
注意点:仰臥位は長時間続けると、肩甲骨や仙骨部、踵などに圧が集中しやすく、褥瘡のリスクが高まる
2. 側臥位:
メリット:仰臥位に比べて圧が分散しやすく、拘縮予防にも有効
ポイント:30度程度の側臥位が推奨される
注意点:側臥位は、骨の突出部がベッドに触れやすく、褥瘡が発生しやすい
3. 座位:
メリット:呼吸を楽にする、食事や排泄の際に身体を支えやすい
ポイント:股関節、膝関節、足関節をそれぞれ90度に維持することが理想
注意点:
長時間同じ姿勢を続けると、臀部に圧が集中し、褥瘡のリスクが高まる
4. 腹臥位:
メリット:呼吸を楽にする、血液循環を改善する
ポイント:胸部をパッド等で支え、腹腔内圧を軽減する
注意点:顔面を圧迫しないように工夫する、長時間維持するのは難しい
これらの体位以外にも状況に応じて様々な体位が用いられます。ポジショニングを行う際は、患者さんの状態や目的、そして褥瘡の予防などを考慮して、適切な体位を選択する必要があります
看護師ならではの視点:夜間や急変時の対応
- 夜間の観察ポイント:皮膚の色、呼吸音、四肢の冷感など
- 急変時の体位調整:呼吸困難時はセミファーラー位、ショック時は下肢挙上など、病態に応じた柔軟な対応が求められます
- ナースコールの届く位置や環境整備も忘れずに
多職種連携で広がるケアの質
- 理学療法士や作業療法士と連携し、リハビリの進捗に合わせたポジショニングを実施
- 医師との情報共有により、治療方針と整合性のある体位管理が可能に
- 介護職や家族との連携も重要:在宅復帰を見据えた支援へ
よくある質問(FAQ)
Q. ポジショニングの頻度はどのくらいが理想?
A. 一般的には2時間ごとの体位変換が推奨されますが、患者の状態に応じて柔軟に対応することが大切です。
Q. クッションが足りないときはどうする?
A. タオルや毛布を丸めて代用可能。ただし、硬すぎないように注意しましょう。衛生管理はもちろん、せっかくの体位が継続でき、再現性も得られるようすることも重要です。ポジショニング専用に開発されたロンボポジショニング ピロー&クッションがオススメです♪
まとめ:ポジショニングは「観察力」と「工夫力」の看護技術
ポジショニングは、患者さんのQOLを左右する重要なケアです。基本を押さえつつ、一人ひとりの状態に合わせた柔軟な対応が求められます。新人看護師の方も、ベテランの方も、日々のケアの中で「なぜこの体位なのか?」を意識することで、より質の高い看護が実現できます。
今日も一日お疲れ様です☆彡
最後まで読んでくださり誠にありがとうございました。医療と介護の現場で奮闘されている皆様に心より感謝しております。皆様にとって少しでもお役に立つ情報がお届けできるように頑張りますので、応援よろしくお願いします♪
Comments