ポジショニングは【Position+ing】
- 中村 研司
- 9 時間前
- 読了時間: 6分

〜“動き”を支える看護ケアの本質〜
「ポジショニング」と聞くと、ベッド上での姿勢調整や褥瘡予防のための体位保持を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、英語で見るとこの言葉は「Position(位置)」に「ing」がついています。
つまり、ポジショニングとは“動き”を含んだ概念であり、単なる静的な姿勢保持ではなく、動きを支援するプロセスと考えることができます。

動かないポジションは、やがてリスクになる
どんなに理想的なポジショニングができても、長時間同じ姿勢が続けば、褥瘡や拘縮、循環不全などのリスクが高まります。これは、私たち自身が長時間同じ姿勢で座っていたり寝ていたりすると、体がこわばったり痛みを感じたりすることからも想像できるでしょう。
✅ ポイント:
- よいポジショニング=そのまま長時間継続してよいわけではない
- 動けることが、真の快適さと安全性につながる
自分で動けることが、最高のポジショニング
看護師が24時間365日、常に患者さんのそばにいることはできません。だからこそ、患者さん自身が自分の力で動けるように支援することが、最も理想的なポジショニングです。
たとえば:
- 寝返りを自分で打てる
- ベッド上で少し体をずらせる
- 車椅子に自力で移乗できる
こうした「自立した動き」こそが、患者さんの尊厳とQOLを守る鍵になります。

動きを理解することが、ポジショニングの第一歩
体位変換や移乗介助を行う際、ただ「動かす」のではなく、「どう動かすか」「なぜその動きが必要か」を理解することが重要です。
看護師が知っておきたい動きの視点:
- 残存機能の活用:
筋力や関節可動域を評価し、活かす
- 重心移動の理解:
どこに体重がかかり、どう移動するか
- 年齢や疾患に応じた速度調整:
高齢者や疼痛のある方には、ゆっくりとした動きが必要
- 動きの順序性:
寝返りや起き上がりの際、どの部位から動かすか
具体例:
- 疼痛がある患者さんには、急な動きは痛みを誘発します。
「ゆっくり、段階的に」が基本。
- パーキンソン病の方には、動き出しのきっかけを工夫することでスムーズな動作が可能になります。
看護師が「頑張りすぎない」ことも大切
つい「全部やってあげたくなる」気持ちはわかりますが、看護師が頑張りすぎると、患者さんは受け身になってしまいます。それは、患者さんの「動く力」を奪ってしまうことにもつながります。
支援のコツ:
- 声かけで動きを促す:
「右足を少し曲げてみましょうか」
- タイミングを合わせる:
「せーの」で一緒に動く
- 動きの一部だけを手伝う:
全介助ではなく、部分介助を意識
自分の体で動きを体験してみよう
動きを理解する最良の方法は、自分の体を使って体験することです。
たとえば、寝返りを打つとき:
1. どこに体重がかかっているか?
2. どの筋肉を使っているか?
3. どの順番で体が動いているか?こうした観察を通じて、適切な体位変換の方法が自然と見えてきます。
実践例:
- 実際にベッドに横になって寝返りをしてみる
- 同僚とペアになって、介助される側・する側を体験する
- 動画で動作分析をしてみる(スローモーションで見ると発見が多いです)

動画で学ぶ:
LACスクールの人気講師でドイツ人看護師のサビーネ・ベッカー先生のポジショニング講義を収録したDVD教材を現在無料でプレゼントしています。ストリーミングですぐにご視聴することも、DVD版を取り寄せて職場の皆様で学ぶこともできます。是非この機会にポジショニングのスキルアップとしてご活用ください。
看護スタッフの立ち姿勢、からだの使い方、動かし方なども解説されています。
揺動運動とポジショニング
人は常にバランスを取り続け、小刻みに動いている生き物です。これを「揺動運動」と呼びます。完全な固定状態や完全な安定状態は、人間の体が欲しているものではありません。
揺動運動とは、立っている時や座っている時に、無意識に体が小さく揺れる動きのことです。この動きによって、筋肉や関節が適度に刺激され、血流が促進されます。
ポジショニングにおいても、この揺動運動を考慮することが重要です。完全に固定された姿勢ではなく、適度に動きを取り入れることで、患者さんの体にかかる負担を軽減し、快適さを保つことができます。
適度な固定性と動けるユルさ?
きちんと姿勢を保持してくれるし、中身が柔軟に動いて身体の輪郭に沿ってサポートしてくれる。それでいて表面的には揺動運動などの小さな動きも阻害しない。そんなプロフェッショナルなニーズにお応えするのがロンボポジショニングピロー&クッションシリーズの人気商品の素材であるロンボ・メッドです♪
メカニズムなども含めた詳しい解説記事も今後追加していく予定です。
今後のブログでは…
このブログでは、今回ご紹介した「ポジショニング=動きの支援」という視点を軸に、今後もさまざまなテーマを取り上げていく予定です。
たとえば、こんな内容を予定しています:
- 人間の動きのしくみ:
寝返り・起き上がり・立ち上がりなど、基本動作の分解と理解
- 感覚と動きの関係:
触覚・圧覚・前庭感覚などが動きにどう影響するか
- 患者さんの「感じ方」に寄り添うケア:
不安・痛み・違和感をどう読み取るか
- ポジショニングに役立つ声かけ・タイミングの工夫
- 実践に役立つケーススタディ:
疾患別・年齢別のポジショニング支援の工夫
ポジショニングは、単なる技術ではなく、「人の動きと感覚に寄り添う看護の知恵」です。現場での実践にすぐに活かせるような内容を、わかりやすく、時には図や動画も交えてお届けしていきます。
まとめ:ポジショニングは「動き」を支えるケア
ポジショニングは、単なる「姿勢の調整」ではありません。動きを理解し、動きを支援し、動きを引き出すこと。それが、真のポジショニングです。
「Position+ing」――この言葉の意味を、ぜひ日々のケアに活かしてみてください。動きを支えることは、生活を支えること。その視点を持つことで、看護の質はさらに高まります。
次回の更新も、どうぞお楽しみに!
今日も一日お疲れ様です☆彡
最後まで読んでくださり誠にありがとうございました。医療と介護の現場で奮闘されている皆様に心より感謝しております。皆様にとって少しでもお役に立つ情報がお届けできるように頑張りますので、応援よろしくお願いします♪
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